「求人を出しても応募が来ない」「やっと採用できたと思ったら定着しない」
そんな悩みを抱える中小・小規模企業の経営者は少なくありません。
一方で、特別に条件が良いわけではないのに、自然と人が集まり、社員が長く定着している会社も確かに存在します。
25年間、80社以上の採用・定着支援の現場に関わる中で見えてきたのは、採用の成否は求人票や媒体以前の“もっと根っこの部分”にあるという事実でした。
この記事では、採用できる会社と定着する会社の決定的な違いをお伝えします。
1.なぜ採用しても定着しないのか?採用と定着の構造的な問題
1-1 採用できない会社が抱える「定着につながらない採用」の特徴
採用がうまくいかない会社には、共通点があります。
それは「採用」と「定着」を別物として考えていることです。
・とにかく応募を集める
・条件を見直す
・媒体を変える
ここまでは取り組んでも、「入社後どう定着させるか」まで考えられていないケースが非常に多いのです。
結果として、条件に惹かれて入社したものの、
「思っていた職場と違う」
「何を期待されているかわからない」
と感じ、早期離職につながります。
採用段階で“定着の設計”がなければ、ミスマッチは必然です。
1-2 採用と定着を分けて考えることが失敗を生む理由
採用は入口、定着はその後の話。
そう捉えている限り、改善は限定的です。
実際には、
採用の時点で定着はほぼ決まっています。
・入社後の役割が具体的に説明されているか
・育成の流れが見えるか
・職場の雰囲気が想像できるか
ここが曖昧なままでは、定着は難しくなります。
2.採用がうまくいかない会社に共通する勘違いと定着の落とし穴
2-1 「条件を良くすれば採用できる」は本当か?定着との関係
給与や休日は重要です。
しかし今の採用市場では、それだけでは決定打になりません。
条件は「比較材料」にはなりますが、
「ここで働きたい」と思う理由にはなりにくいのです。
さらに、条件だけで集まった人材は、
より良い条件があれば転職する可能性も高くなります。
つまり、条件中心の採用は、定着と必ずしも結びつきません。
2-2 「若者はすぐ辞める」という思い込みが採用と定着を阻む
「最近の若者は定着しない」
そう感じる経営者の方も少なくありません。
しかし実際には、若手が長く定着している会社も確実に存在します。
違いは世代ではなく、
受け入れ方と関わり方 にあります。
曖昧な指示、説明不足、相談しづらい空気。
これらがあると、若手は不安を抱えやすくなります。
問題は世代ではなく、採用後の環境設計にあるケースがほとんどです。
3.採用と定着が両立している会社が持つ3つの土台
3-1 採用前から定着を見据えた「人と空気」の伝え方
採用できる会社は、仕事内容だけでなく
「どんな人が働いているか」
「どんな空気の会社か」
を具体的に伝えています。
・年齢層
・社長の人柄
・社員同士の関係性
応募者は「仕事」より先に、「人」と「空気」を見ています。
ここが見えないと、不安が勝って応募に至りません。
3-2 採用後の定着を左右する“安心感”のつくり方
定着している会社には、共通する安心感があります。
・失敗したときの扱い方
・質問できる雰囲気
・最初に誰が面倒を見るのか
特別な制度ではなく、
「困ったときに聞ける環境」があるかどうか。
この安心感が、採用にも定着にも大きく影響しています。
4.採用と定着を変えた会社の小さな実践例
4-1 建設業で実践した採用と定着の改善策
ある建設業の経営者は、
「人が続かない。もう諦めかけている」と話されました。
話を聞くと、仕事の厳しさよりも、
「わからないことを聞けるタイミングがない」
ことが課題でした。
そこで変えたのは、
・面接で働く人の雰囲気を丁寧に伝える
・入社後、毎日5分の声かけ
・最初の1か月は“できなくて当たり前”と共有
たったそれだけでした。
4-2 採用と定着は特別な施策ではなく日常の延長線
結果として応募が増え、
「思っていたより安心して働ける」という声が増え、
定着率も改善しました。
採用と定着は、特別なテクニックではなく、
日常の関わり方の延長線にあります。
5.採用と定着を安定させるために経営者が意識すべきこと
5-1 採用と定着を支える「関わり方」の見直し
採用力の差は、実は日常の関わり方の差です。
・期待を言語化しているか
・安心して失敗できる空気があるか
・成長の道筋を示しているか
こうした積み重ねが、結果として採用と定着につながります。
5-2 採用と定着は会社の“文化づくり”から始まる
採用できる会社は特別なことをしているわけではありません。
・人を大切にする姿勢
・対話を重ねること
・期待を伝え続けること
これらが文化として根づいているのです。
採用と定着は、求人票の問題ではなく、
会社の文化の問題。
だからこそ、変えられる可能性があります。
■ おわりに
この記事を読んで、
「うちの会社にも当てはまるかもしれない」
と感じたなら、それは改善の第一歩です。
採用と定着は、一夜にして変わるものではありません。
しかし、日常の関わり方を少し見直すだけで、確実に変化は始まります。
“もっと早く相談すればよかった”
そうおっしゃる経営者の声を、これまで何度も聞いてきました。
だからこそ、気軽に話せる存在でありたいと思っています。
